La Finestra nuova Vol.12
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 1969年の「フリーフォームチェア」、70~80年代の「September」など椅子の原型を探る試み、80年代の「ヨウジ・ヤマモトブティック」などのミニマルな内装、「受庵・想庵・行庵」「門司港ホテル」など90年代以降の日本的なデザイン。時代ごとに数々の名作を生んだ内田繁さんですが、根底にはつねに「人を観察しデザインを問い直す」姿勢がありました。 内田さんにとってデザインは「日常の暮らしを豊かにするもの」と述べています。それは人と空間、場面の関係を注意深く観察し、「心に深くかかわることで実現する」とも。日本では「座る・靴を脱ぐ」「緩やかな仕切り」「あいまいな光や色彩」などの固有文化に即したデザインが不可欠と気づいた内田さんは、茶室をはじめとした日本的な作品を多く手がけるようになったのです。晩年は日本におけるインテリアデザインの歴史や意義の編纂作業をライフワークに。作品とともに残された著書の数々を読み解くことで、デザインのあり方を深く学ぶことができそうです。2016年に惜しくもこの世を去った、日本を代表するインテリアデザイナーの内田繁さん。多くの作品や著書とともに彼が遺したものは観察と理解によるデザインの大切さでした。内田繁が遺したものNext Issue Vol.13は2017年6月下旬発行の予定ですぬくもりに包まれて暮らしたいやっぱり木のインテリアが好き♥あたたかくて気持ちいい、やっぱり好きな木の家やインテリア。木に囲まれて素敵な暮らしを送る人や、あの名作家具、最新アイテムまで、ナチュラル、ヴィンテージ、スタイリッシュなどさまざまな木のインテリアをお届けします。※編集内容は変更になる場合があります。茶室をミニマルにデザインした「受庵・想庵・行庵」(1993年)は欧州各国を巡回しました。折りたたみ式で、茶会が終わればたたんでしまえます。内田さんは「しまう」「出す」行為やその自在性も日本的だと述べています。 ⒸNacása & Partners Inc.1977年の作品「September」。この時期、空間に溶け込むような細い線と幾何学図形からなる作品を数多く発表。抽象的にデザインすることで、椅子の原型(アーキタイプ)を探っていたといいます。メトロポリタン美術館永久コレクション指定。ⒸNacása & Partners Inc.2000年代の作品から。2006年にリブランディングされた「オリエンタルホテル広島」の家具をはじめ空間デザイン全般を担当。色づかいや照明などにほのかに和を感じさせる、スタイリッシュなデザインが魅力的。Ⓒ淺川敏ⒸDO FACTORY21943年横浜市出身。日本を代表するデザイナーとして商・住空間、家具、工業デザインから地域開発にいたる幅広い活動を国内外で展開。毎日デザイン賞、芸術選奨文部大臣賞、紫綬褒章、旭日小綬章など受賞歴多数。専門学校桑沢デザイン研究所所長(2008~11年)。メトロポリタン美術館等に永久コレクション多数。著書に『プライバシーの境界線』『日本のインテリア全4巻』『家具の本』『インテリアと日本人』『普通のデザイン』『戦後日本デザイン史』等。2016年、73歳にて永眠。地域や文化に根ざしたデザインの追求企画・発行 トーソー株式会社 トーソー出版編集・制作 株式会社デュウAD・デザイン 草薙伸行・蛭田典子(Planet Plan Design Works)印刷・製本 図書印刷株式会社La Finestra nuova Vol.122017年3月17日発行 www.finestra.jpShigeru Uchida

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